IPv4とIPv6にはどのような違いがあるのか疑問に思っていますね。また、IPvとはそもそもどのようなものなのか気になっているでしょう。
IPとは、インターネットに接続する方法や手順といった規約のことで、IPv4とIPv6ではインターネットに接続できるIPアドレスの数(コンピューターの台数)が異なりますよ。
この記事では、IPv4とIPv6の違いを分かりやすく解説しています。また、それぞれの特徴や、おすすめの接続方法IPv4 over IPv6についても記載していますので、参考にしてください。
この記事を読めばIPv4とIPv6の違いを理解でき、それぞれの特徴を理解することで、どのような回線を使うか比較・検討できます。
目次
IPv4とIPv6とはどういうもの?

まず初めに、IPとはInternet Protocol(インターネットプロトコル)の略で、インターネットに接続する方法や手順といった規約のことを表しています。そして、みなさんが普段使っているパソコンやスマートフォン、タブレットなどインターネットに接続できる端末には、固有のIPアドレス(住所のようなもの)が割り振られているのです。
たとえば、サイバー犯罪が発生した際、どの端末から攻撃を受けたのか特定するために、IPアドレスを割り出すということも可能です。
また、IPvとはIPアドレスの第〇版つまりバージョンを表しており、IPv4とIPv6は第4版と第6版ということになります。
IPv4は、インターネットが普及し始めた1990年代から現在まで使われており、IPv6は急速なインターネット普及需要に耐えうるよう、注目されている次世代のプロトコルです。
では、IPv4とIPv6にはどのような特徴があるのでしょうか。次の見出しで説明します。
IPv4の特徴
結論からいうと、IPv4の特徴は約43億台の端末がインターネットに接続できるということです。
どういうことか説明しますと、まずIPv4でのアドレスの総数は32bitのデータとして表現されます(一度に処理できるデータの幅や量のこと)。
そして、32bitで表せるのは2の32乗個となっており、計算すると約43億個です。つまり、IPv4では最大で43億台の端末がインターネットに接続できるということになります。
しかし、世界の人口は約78億人で、一人1台端末をインターネットに接続したとしても、残りの35億人はインターネット接続ができません。また、急速なインターネット需要拡大に伴い、端末を持つのが一人1台とは限らないのです。
そこで、注目されているのが次世代のプロトコルであるIPv6です。IPv4で発生したIPアドレス不足を解消できる新しい規格となっています。
IPv6の特徴
IPv6の特徴は、利用できるIPアドレスを実質無限ともいえる数の端末まで割り振れるということです。
こちらも説明しますと、IPv6ではアドレスの総数を、IPv4よりもさらに大きい128bitのデータとして表現されます。128bitで表せるのは2×128乗個となっており、計算すると約340澗(かん)個です。
澗という単位を耳にすることはあまりないと思いますが、参考までに説明しますと兆や京よりも上の単位で1澗は1兆×1兆×1兆となります。約340澗個は膨大な数であり、世界のインターネット端末の数がこの数字を上回り、IPアドレスが不足する可能性は低いのではないでしょうか。
IPv6は、IPv4で発生したIPアドレス不足を解消するだけではなく、回線の混雑解消も期待されています。
IPv4とIPv6の違いについて解説

IPv4とIPv6の特徴について説明しましたが、両者のどのような部分に違いがあるのでしょうか。上記で記載したような接続できる端末数やbit数のほかに、以下のような違いがあります。
- IPアドレスの数
- bit数
- 回線速度
- 接続方法
- 対応設備
- 互換性
- セキュリティ体制
それぞれ詳しくかつ分かりやすく説明していきます。
違い1.IPアドレスの数
IPv4とIPv6の大きな違いは、割り振れるIPアドレスの数です。
- IPv4:約43億個
- IPv6:約340澗個(実質無限の数)
特徴の部分にも記載したように、発行できるIPアドレスの数にこれだけの違いがあります。これだけの数の端末が接続できれば、一人1台じゃなくても複数の端末を接続できますね。つまり、IPv6でIPアドレスが不足するという問題は発生しないといえるのです。
違い2.bit数
発行できるIPアドレスの数があれだけ違うのには、bit数の違いが関係しています。
bitとは、パソコンが一度に処理できるデータの大きさのことで、パソコンが発売された当時は8bit(1バイト)でした。それが、パソコンの性能が進化したことにより、8bit→16bit→32bit→64bitと徐々に拡張されるようになっていったのです。
- IPv4:32bit
- IPv6:128bit
bitで表現できる情報の数は2×〇乗で計算できるため、たとえば8bitの場合は2×8乗(2×2×2×2×2×2×2×2)なので256です。IPアドレスに例えると256台の端末がインターネットに接続できるということになります。
この計算方法でIPv4でのアドレスの総数を割り出すと2×32乗個(約43億個)、IPv6の場合は2×128乗個(約340澗個)となりますね。一度に処理できるデータの大きさが違うため、発行できるIPアドレスにも膨大な差があるということです。
違い3.回線速度
IPv4とIPv6では回線速度にも違いがあり、IPv6のほうが回線速度が速いです。なぜ回線速度に違いがあるのか、その理由としてIPv4は「光回線終端装置」を経由してインターネットに接続していることが挙げられます。
光回線終端装置とは、光信号をONUを通し電気信号に変換するとともに、パソコン等の端末機器から電気信号をONUを通し光信号に変換する装置です。
出典:「フレッツ光」で利用するONU(オーエヌユー)とは何ですか。 | よくあるご質問|フレッツ光公式|NTT西日本
つまり、自宅に引き込んだ光回線からの光信号のままではインターネットに接続できないため、電気信号に変換して接続できるようにするということです。
しかし、この接続方法ではアクセスが集中した際に、スペック不足で装置が耐えられなくなってしまいます。その結果、回線が混雑し通信速度が遅くなってしまうのです。
一方、IPv6は装置を介さず直接インターネットに接続するため、混雑もなく回線速度も速くなります。
違い4.接続方法
IPv4とIPv6では接続方法も違います。それぞれの接続方法は以下のとおりです。
- IPv4:PPPoE
- IPv6:IPoE
PPPoEとIPoEについては後述しますが、IPv4の場合は従来の接続方式PPPoEでしか接続できません。しかし、IPv6の場合はPPPoEとIPoEのどちらでも接続可能です。
また、IPoEのほうが通信速度が安定しているため、インターネットの通信速度に対する悩みを解決する方法として、IPoE接続方法が注目されています。
違い5.対応設備
IPv4で使用できるルーターやLANケーブルは、IPv6にも対応していることがほとんどです。しかし、一部の設備に関してはIPv6に対応していないものもあるため、IPv4からIPv6に変更する際は注意が必要でしょう。
たとえば、ルーターやLANケーブルのほかに、プロバイダーやインターネット回線といった設備です。IPv6に対応している設備かどうか、事前に確認しておきましょう。
違い6.互換性
IPv4とIPv6には互換性がありません。つまり、IPv4を利用してIPv6が採用されているWebサイトにアクセスしようとしても、接続できないということです。逆も同じように接続できません。
IPv4を利用している場合はIPv4が採用されているWebサイトのみ、IPv6を利用している場合はIPv6を採用しているWebサイトのみです。
違い7.セキュリティ体制
IPv4よりもIPv6のほうがセキュリティの強度が高く安全です。その理由は、情報を暗号化することによってセキュリティを強固するプロトコル「IPsec」がIPv6に組み込まれているからです。
IPsec(Security Architecture for Internet Protocol)とは、暗号化によってパケットの秘匿や改ざん検知を実現するプロトコルです。
出典:IPsecとは?意味・定義 | ITトレンド用語 | NTTコミュニケーションズ
つまり、Security(安全)をArchitecture(建築または構築)することで、データの機密性を高めているということですね。一方で、IPv4のほうにはIPsecが組み込まれておらず、オプション扱いとなっています。
そのため、IPv4よりもIPv6のほうがセキュリティ体制が整っていると言えるのです。
PPPoEやIPoEに違いはある?

「違い4.接続方法」で述べたように、IPv4とIPv6では接続方法に違いがあり、これはインターネットの通信速度を安定させるための大切なポイントです。
簡単に説明するとPPPoEは従来の接続方式で、IPoEは新しい接続方式です。では、より詳しく分かりやすいように説明していきますね。インターネットの通信速度に悩みを抱えている方は、参考にしてください。
PPPoEとは
PPPoE(Point to Point Protocol)とは、トンネル方式とも呼ばれ、電話回線と光回線終端装置を介して接続する従来の方式です。
プロバイダーからのユーザーIDとパスワードを入力しなければいけませんが、承認されなければインターネットに接続できません。
デメリットとしては、ユーザー認証する手間が発生したことで回線が混雑し、その結果通信速度が遅くなるということが挙げられます。また、ルーターやアダプターなどをユーザー自身が準備しておかなければならないのもデメリットと言えるでしょう。
しかし、プロバイダーによってはPPPoEと、次に説明するIPoEどちらの接続方式でも設定可能という場合があります。ただし、インターネット需要が急速に拡大したこともあって、PPPoE方式を使っている場合は、利用者が多くなる夜間や休日は速度が遅くなる可能性があることを認識しておきましょう。
また、IPv4ではPPPoE方式でしか接続できません。
IPoEとは
IPoE(IP over Ethernet)とは、ネイティブ方式とも呼ばれ、イーサネットに直接接続することを前提とした接続方式です。
つまり、PPPoEとは違いルーターやアダプターを準備する必要がないということです。また、プロバイダーを介して直接インターネットに接続できるため、プロバイダーからのユーザーIDやパスワードを入力する必要もありません。
光回線終端装置を介さず、ユーザー認証もおこなわないため、回線が混雑することなく通信速度も安定していますよ。PPPoEとIPoEの違いをまとめると、以下のようになります。
PPPoE | IPoE | |
接続可能なWebサイト | IPv4のみ | IPv6のみ |
通信速度 | 遅い | 速い |
出典:【初心者でも分かる】PPPoE方式とIPoE方式の違いとメリット|ICT Digital Column 【公式】NTTPCコミュニケーションズ
IPv4ではPPPoE方式のみでしたが、IPv6の場合はPPPoEとIPoEどちらの接続方式にするか選択することができます。
通信方式IPv4 over IPv6とは?

IPv4とIPv6の接続方式について説明してきましたが、IPv4とIPv6には互換性がないためアクセスできるWebサイトが限られているのがデメリットと言えます。しかし、そのようなデメリットを解消するために開発されたのが通信方式IPv4 over IPv6です。
IPv4 over IPv6とは、IPv6でインターネットに接続しても、IPv4のみに対応しているWebサイトにアクセスできるという技術で、その特性からこのように呼ばれています。
つまり、IPv4 over IPv6を利用すれば、IPv4とIPv6どちらのWebサイトにもアクセスできるということですね。
では、どちらのWebサイトにもアクセスできる以外に、IPv4 over IPv6にはどのようなメリットがあるのでしょうか。メリットとあわせて注意点についても記載していますので、参考にしてくださいね。
IPv4 over IPv6のメリット
IPv6でインターネットに接続しながら、IPv4が採用されているWebサイトにアクセスできるというのは大きなメリットです。
また、通信速度が安定していることもメリットと言えます。これは、IPv4 over IPv6ではIPv6の接続方式であるIPoEが採用されているからです。
これにより、インターネット利用が集中する夜間や休日でも、通信速度が不安定になることはありません。つまり、インターネットの通信速度に悩みがある場合は、IPv4 over IPv6でIPoE方式を選ぶとよいということです。
IPv4 over IPv6の注意点
メリットがある一方で、IPv4 over IPv6には以下のような注意点もあります。
- プロバイダーとルーターが対応している
- 追加料金がかかる可能性もある
それぞれ説明しますと、IPv4 over IPv6を利用する場合、契約しているあるいはこれから契約するプロバイダーや、ルーターがIPv4 over IPv6に対応している必要があります。
そのため、これからIPv4 over IPv6の利用を検討している場合や、IPv4 over IPv6に変更しようと検討している場合は事前にプロバイダーに確認しておきましょう。
また、IPv4とIPv6の両方にプロバイダーに対応していたとしても、場合によってはオプションサービスに申し込まなければいけません。その結果、追加料金がかかってしまう可能性もあります。
IPv4 over IPv6には上記のような注意点もありますが、IPv4 over IPv6は通信が安定していて、IPv4が採用されているWebサイトにもアクセスできるためおすすめです。
IPv4とIPv6の違いを知って安定した通信を保とう!

この記事では、IPv4とIPv6がどのようなものなのか、また、両者の違いを分かりやすく解説しました。
結論から言うと、IPv4とIPv6の違いはインターネットに接続できるIPアドレス(コンピューターの台数)です。従来の規格であるIPv4で発行できるIPアドレスが枯渇したことで、次世代の規格IPv6が誕生しました。
また、現在では、IPv6環境でIPv4が利用できるIPv4 over IPv6も登場しています。IPv4 over IPv6は、通信速度も安定しており、IPv4が採用されているWebサイトにもアクセスできるため、インターネットの通信速度に悩んでいる場合におすすめです。
しかし、注意点もいくつかあるため、メリットと注意点どちらも踏まえたうえで導入を検討するとよいでしょう。
インターネット回線やプロバイダーを検討する際は、IPv4とIPv6の違いを知って、通信規格を参考にしながら選びましょう。